プリシラ【The Adventures of Priscilla】

ヤバい。
テレンス・スタンプが本物の女に見えてきた……。

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、
真夜中っていうか明け方に観たせいか、
目にもズバっときましたが、ハートにもバリっときました。

退役スクールバス「プリシラ」号に乗って、
砂漠を突っ走る3人のオカマ（ドラッグクイーン）の話ですな。

いつの時代、いつの世もオカマは偏見にさらされてきた。
でも、私たちは傷ついた分だけ強くなる。
やっぱり私たちの家は、都会。
都会の夜が私たちの住処よ〜!!!

と、オカマたちが再認識する壮大な（？）ドラマですよ、これが。

ほかの映画じゃ、貴族の役とか、見るからに怪しい悪役を演じている
テレンス・スタンプが最長老のオカマちゃん。
「やめて、トップスターだったなんて。私はそんなにすごくないわ」って
謙遜するあたりがもー普通じゃない。（笑）
彼女（いや彼なんだけど）の立ち居振る舞いが、天然の女よりも女っぽくて
超びっくり。
後半の彼女のロマンスには老いた女の哀愁が漂っていたわ。
こんなおばさん、いるよっ!!!　絶対に!!!と
図らずも思ってしまった自分がいました。（笑）

中堅のオカマちゃんを演じたのは、今もっとも熱い中年スター、ヒューゴ・ウィーヴィング。
『ロード・オブ・ザ・リング』とか『マトリックス』の前は、こんなオカマやってたんだーと感心するしきり。
唯一、妻帯者で子持ちの役。
彼女（彼だってば）の奥さんは、彼女よりも男らしくサバサバしちゃってるの。
女手一つで育て上げた2人の間の息子は無事にらしく成長。（いや、カマっぽいという意味ではなく）
あっけかーんと「今度ABBA（アバ）の出し物やってよ」と父ちゃんにリクエストを出しちゃう。
自分の職業をなかなか息子に言い出せなくて思い悩んでいたとーちゃんが、
息子にとんだ晴れ姿（派手な化粧で歌って踊ってる姿）を見られてしまい
失神したのとはエラい違い。心臓に毛が生えてますな。

一番若いオカマちゃんは、『メメント』以降姿を観てないような気がするガイ・ピアース。
普通の家庭でやんちゃないたずら坊主として成長。
ところが父ちゃん（継チチっぽかったような雰囲気もしたけど、本物の父親よね？）は、
入浴中に息子に何を手伝わす変態野郎だった。
そんなこんなでオカマの道に。
とにかく人を怒らせるのが大好きで、お陰で大変な目に遭うことも。

いやねー。
ただのオカマの珍道中かと思って観たけど、終わったら
「甘く見た私が悪うございました」って気持ちになりました。
なんていうかね。
この人たち、ハートは実にまともなのよ。
いや、この人たちって言っても、それはテレンス・スタンプ演じる最長老のオカマちゃんと、
ヒューゴ・ウィーヴィング演じる中堅のオカマちゃんのことなんだけど。
一方で、一見まともに見えるサブキャラが濃い!!!

旅の途中で知り合った、テレンス・スタンプに惚れちゃうおっさんがその筆頭。
一見普通のおっさんなんだけど、とにかく致命的に女の趣味が悪い。
おっさん、もしかしてテレンス・スタンプが一番まともな「惚れた相手」なんじゃないの？
って感じ。
いやね、品のない元ショーガールの妻にナイトクラブ行きを禁じたり（結局逃げられる）
屈強な男どもに襲われたオカマちゃんたちを助けてくれたりと
ものすごくいいキャラなんだけどね〜。
とにかく、怪しい。（笑）

今回の砂漠の珍道中は、中堅オカマちゃん・ヒューゴの別居中の妻が企画したもの。
奥さんは、オーストラリアの砂漠のド真ん中もど真ん中、超ド田舎町のショーパブで
働いている。息子会いたさに出演を承諾しちゃう都会在住のオカマちゃんとこの奥さんの再会シーンは、
まるでしばらく会っていなかった女学生同士の再会のシーンのようですがな。
奥さん、あんた、女子高歴長すぎて普通の男の人とじゃうまく行かないんでしょ？
と思わず勘ぐってしまいたくなるような怪しさ。（笑）

2人の間の息子がこれまたまた、一見普通なのにかなり変。
父親の職業を知っても、へー然としてるわけよ。

ま、そんなこんなで、オカマ3人は迫害を受けたり、思わぬ愛をもらったりしながらも
「砂漠のド真ん中で、ショーを決行する」夢を敢行。
「やっぱり私たちには都会が似合うわね」と再認識するのであった。
チャンチャン。

なんかねー。
下手な恋愛映画とか、ざーとら家族愛映画なんかよりよっぽど胸にくるものがありますよわよ。
超お勧め。